おすすめ百合作品を紹介する⑥Lの世界

おすすめ百合作品を紹介する⑥Lの世界

ここ数年、国内でBLのドラマが増えています。ひと昔前は映像作品といってもアニメか映画かどちらかだったのに、地上波ドラマまで放送されるようになったというのは驚くばかりです。一方で、百合のドラマはまだまだ少ないといえます。まったくないわけではないのですが、豊富とはとてもいえない状況です。切実に増えてほしい……と願っているのですが、BLより市場が小さい分、仕方がない面もあるのかもしれません。
海外に目を移すと、BL・GL問わず同性愛を扱ったドラマはすでに大量にあります。Netflixなどの配信サイトを覗けばオリジナル作品がすぐに見つかりますし、同性愛が主題でなくても同性愛者が登場する作品はだいぶ一般的になりました。最近ではSNSでタイの百合ドラマ『GAP The series』が話題になるなど、欧米以外からも作品が出てきています。願わくは、ぜひ国内でも百合がもっとブレイクして、日本発のドラマが続々と生まれてほしいと思わずにはいられません。
こうしたドラマが増えているのは今の新しい流れのように感じるかもしれませんが、実は20年近く前にもレズビアンを扱ったドラマは存在しています。それは、2004年から2009年までアメリカで放送されたテレビドラマ『Lの世界』(原題:The L Word)です。
Lの世界はロサンゼルスのレズビアンコミュニティの人間模様を描いた作品で、地上波で初めてのレズビアンドラマとして大きな話題になりました。現在、U-NEXTとHuluで全6シーズンが配信されており、Huluでは2019年から続編にあたる『ジェネレーションQ』も独占配信されています。
全6シーズンと聞くと気が引ける人もいるかもしれませんが、レズビアンドラマといえばこれ!といえるような金字塔的作品であり、今でも楽しめるエンタメ性の高い作品です。むしろ、同性愛がテーマのドラマが増えている今だからこそ、古典にあたるような気分で見てみるのも面白いかもしれません。そんな思いから、今回は『Lの世界』を紹介してみたいと思います。

引用:Hulu公式サイト

レズビアンの日常系

Lの世界を見てまず驚くのが、登場人物のほとんどがレズビアンか女が好きな女であることです。同性愛がテーマのドラマといっても、一組のカップルの話だったり、何人かの登場人物のうち一人が同性に恋する話だったりするパターンは少なくありません。しかし、Lの世界ではメインキャラからサブキャラまで、ほとんどが女が好きな女主体で物語が動いていくのです。
Lの世界では異性愛の方がむしろマイノリティです。カフェに行けば女友達同士で「彼女とうまくいってる?」と話が始まり、パーティに行けばタイプの女を見つけて「あの子と付き合いたい」などといった会話が交わされます。いわば、レズビアンの日常系です。ポリコレのためにマイノリティ要素を入れたとかではなく、登場人物がレズビアンであることが前提の物語なのです。レズビアンに限らずマイノリティの人であればわかると思いますが、周りの人が全員マイノリティ的な感覚を共有していることの安心感はすごいです。日常生活で一瞬でも息の詰まるような経験をしたことのある人なら、このドラマに救われるところがあるかもしれません。
こう書くと、マイノリティ以外の人は感情移入しにくいんじゃないかと思われるかもしれませんが、物語に入っていきやすくなる工夫は随所にあります。例えば、シーズン1はロサンゼルスに引っ越してきた異性愛者のジェニーが、隣人を通じてレズビアンのコミュニティに馴染んでいくところから話が始まります。ジェニーの視点で、初めての土地で初めての文化に触れていく楽しさを感じられるので、自然と物語の世界に入っていけます。主人公もジェニーのほか、大人カップルのベットとティナ、女にもてる女のシェーン、面白キャラのアリスなど複数人いるので、一人は親近感のわく人物が見つかるはずです。
さらに、華やかなロサンゼルスの生活を追体験できる楽しさもあります。明るく開放感のある街の風景だったり個性的なファッションだったり、見ているだけでもテンションが上がるシーンがたくさんあります。そんな舞台で繰り広げられる女同士の恋愛模様には目を奪われてしまうこと間違いなしです。

シリアスよりセックス

海外ドラマといえば、次から次へと起こる怒濤の展開や先が気になる強いクリフハンガーというイメージを持っている人も多いと思いますが、この作品も多分に漏れずです。ある恋愛関係が泥沼したかと思ったら、別のキャラクターが仕事でトラブルを起こし、その合間に意外なカップルが誕生して……などなど、とにかく展開が早くて目が離せません。それぞれの登場人物がいろいろな夢や悩みを抱えているのですが、それらがうまく噛み合って、ジェットコースターのように怒濤の展開が続いていきます。
もちろん、マイノリティがテーマなだけあって、家族関係や社会的な問題に焦点があたることもあります。しかし、一貫して雰囲気が暗くなりすぎることはなく、どこかコミカルな描写があったり、面白い方法で問題を解決したり、笑いどころも常にあります。堅苦しさはまったくないので、シリアスすぎる作品が苦手な人でも楽しめるでしょう。
それに実のところ、真面目なシーンの百倍くらい多いのが、セックスシーンです。百合のエロゲーなんて目ではないくらいに毎回ほぼ必ずセックスシーンが登場します。恋愛模様がメインのドラマなので当然ですが、とにかく絡みは多めで、下ネタもオープンです。百合好きにとっては最高に素晴らしい作品ではありますが、人と一緒に見るのはあまりおすすめできないかもしれません。

公式の供給が強すぎる

ここまでいろいろ紹介してきましたが、やはり海外ドラマは日本とノリが違う面もあるので、ハードルが高いと思う人もいるでしょう。そこで最後に、普段オタクをしている人の視点からおすすめポイントを紹介したいと思います。それはずばり、登場人物が多い&関係性が多様なので、全シーズンのどこかで絶対に推しカプが見つかることです。
このドラマがオタク的にすごいと思うのは、メインの登場人物のほかに、シーズンごとに新しい登場人物が入ってきて、常に新たな関係性が生まれることです。中にはサブキャラクターだった人物がメインキャラクターに昇格する胸熱な展開もあります。
しかも、その新しく加わる人物たちが、揃いも揃って魅力的なキャラクターばかりなのです。ミステリアスな年上のお姉さん、世話好きの陽キャ、セクシーな悪役令嬢、生意気な新人女優などなど……。言い方はあまりよくないかもしれませんが、まるでソシャゲのように手を替え品を替え、公式が次々と魅力的な刺客(女)たちを送り込んできます。なにより、その人物たちが恋愛する相手も全員魅力的な女なのだから手に負えません。友達同士、職場の上司×部下、高値の華×遊び人……。可能性は無限大です。
最初こそ、海外ドラマらしいあけすけな描写にビビるかもしれませんが、百合好きのオタクなら、公式からの大量供給にすぐに骨抜きにされてしまうはずです。気づいたときには、ユリトピアはここにあったと思わずにはいられないでしょう。


来年には放送20周年を迎え、新作のジェネレーションQの続編の制作も決まっており、まだまだ勢いが衰えないLの世界。完走するにはそれなりに時間はかかりますが、まずはシーズン1だけでもいいので、ぜひ見始めてみてはいかがでしょうか!