おすすめ百合作品を紹介する⑤屋上の百合霊さん

おすすめ百合作品を紹介する⑤屋上の百合霊さん

ここをユリトピアにしよう――そんな衝撃的なキャッチコピーを聞いたことがある人はいるでしょうか?
これは2012年にライアーソフトから発売されたPCゲーム、『屋上の百合霊さん』の一節です。『屋上の百合霊さん』は、その名のとおり百合をテーマにしたアダルトゲームで、2016年には英語版、2018年にはフルボイス版が発売されています。特に英語版は、規制が厳しいSteamで成人向けゲームとしては初めて無修正で発売された作品として話題になりました。
ゲーム以外にもドラマCD化やコミカライズなど展開も多く、今でも根強いファンのいる作品の一つといえます。かくいう私も発売当時から知っていたわけではなく、数年前にプレイして以来ファンになった人間ですが、クリア後の充足感がすさまじく、いまだにシナリオを思い出しては余韻に浸りたくなってしまうくらい好きな作品です。
毎回昔の作品ばかり取り上げるのもどうなのか……と思うところもあるのですが、奇しくも去年発売から10周年を迎えた本作品、これからでもぜひ色々な人に知ってほしいと思うので、魅力を紹介していきたいと思います。

引用:屋上の百合霊さん公式サイト

ドラマチックでエンタメ性の高いシナリオ

まず、本作の最大の魅力といえば、なんといってもシナリオの面白さです。百合好きなら確実に刺さるラブストーリーはもちろん、学園ものらしい青春ドラマ、恋愛ゲームにしては珍しいミステリー要素まで、一作品で様々なジャンルのエンタメが楽しめます。
あらすじを紹介すると、主人公の女子高生・遠見結奈(ゆな)はある日学校の屋上で、二人の少女に出会います。結奈は見慣れない制服を着た少女たちを怪しみますが、実は二人は過去に学校で亡くなった生徒の幽霊で、しかも同性カップルだったのです。二人は幽霊ならぬ“百合霊”として、学校中にいる女子に恋する女子たちの恋愛を成就させようと奮闘しますが、結奈もその手伝いに巻き込まれれることになって……。
と、このあらすじだけでもわかるように、なかなか型破りな設定です。百合霊ってなんだ……?なんて考えている間もなく、冒頭から気になってしまう展開が続出で、恋愛ゲームに慣れていない人でも心をつかまれてしまうこと間違いなしでしょう。
ゲームシステムも変わっていて、特定のキャラを攻略するというよりは、様々なカップルの恋愛模様を見守るような形で複数の物語が同時進行していきます。百合好きには自分が感情移入したいタイプの人もいれば、壁になって見守りたいタイプの人もいると思いますが、どちらでも楽しめる仕様になっています。登場するカップルも、先輩と後輩、先生と生徒、気の置けない友達などバリエーション豊かなので、どこか一組はお気に入りが見つかるはずです。
さらに、複数シナリオがあるからといって浅く広くではなく、それぞれが独立した物語としても十分楽しめるくらいドラマチックに描かれていきます。作中では春から冬まで時間も経過していくのですが、主人公とともに徐々に関係性が変化していくカップルたちを見守るのは、百合漫画の世界に入り込んだかのような没入感があります。

テンプレじゃない個性的なキャラクター

もう一つの大きな魅力は、人間味溢れるキャラクターたちです。幽霊の出る作品なのに人間味というのもおかしな話ですが、どのキャラクターもただかわいいだけでなく、物語のためのご都合主義になることもなく、様々な内面を持っています。ときには欠点ともいえるような癖の強さも持っていたりするのですが、それがまた魅力的なのです。
例えば、物語の序盤に登場する牧聖苗(せいな)は三年生の優しいお姉さん的な先輩に憧れている一年生です。一見すると、小動物的なかわいい感じの子なのですが、いざというときには先輩も驚くような芯の強さと行動力を発揮します。
こんな感じで、見た目と裏腹のギャップがあったり、気丈そうに見えて悩みを抱えていたり、テンプレになりすぎない生き生きとしたキャラクターが登場します。彼女たちは一見すると派手ではないし、ツンデレやギャルといったわかりやすい属性があるわけでもないのですが、全員違ったかわいさや人間的魅力があるのです。
ゲームには主人公と百合霊さんが主に活躍するメインシナリオ、サブキャラたちが活躍するサブシナリオの二種類があるのですが、この二つのシナリオがキャラクターに深みを与えてくれています。同じイベントであっても違うキャラクターの視点から見ることで、そのときのキャラクターたちの心情がより鮮明になります。百合の醍醐味の一つといえばキャラクター同士の関係性ですが、カップリングの両方のキャラクターの心の動きがわかることで、二度おいしくシナリオを楽しめるでしょう。

成人向け初心者にもやさしいゲーム設計

最後におすすめしたいポイントが、いい意味でのエロゲーっぽくなさです。百合ゲーにはアダルトゲームも数多くありますが、なかなか手に取りにくいという人や抵抗があるという人も少なくないはず。本作はそういう人にとっても、かなりとっつきやすく、初心者にやさしいゲームだと思うのです。
その理由の一つが、濃厚すぎないエロ描写です。これは人によっては魅力とはいえないかもしれませんが、エロゲーに慣れていない人にはかなりありがたい点です。もちろん18禁ですので、性的なシーン自体はしっかりあります。しかし、性的なシーンの描写よりも、そこに至るまでの過程や心理描写に重きが置かれているため、エロゲーをやったことのない人にこそ刺さると思うのです。私自身、百合に関しては恋愛が成就するまでの心理描写や関係性の変化が好きだったりするのですが、そういうものに惹かれる人には向いているゲームといえるでしょう(とはいっても、人のいないところでプレイすることをおすすめします)。
さらに、アダルトゲームとしてかなり異質なのが、キャラクターデザインです。普段エロゲーやギャルゲーをやる人なら感じると思うのですが、本作のキャラクターデザインはかなり一般寄りです。ものによっては、市販の百合漫画や萌え漫画よりもよほどエロさのないデザインといえるかもしれません。個人的に好きな絵柄というのもあるのですが、このシンプルで癖のないデザインが、爽やかな青春群像劇のストーリーにもすごくマッチしていると思います。


さて、ここまで様々な魅力を紹介してきましたが、本音を言えばまだまだ語りたいことは大量にあります。しかし、初見の人に先入観なくプレイしてほしいという思いを込めて、ストーリーには触れすぎないようにしてきました。本当は「あのCPのここがいい!」とか「あの二人のこのシーンが最高!」というのが無限にあるのですが、その話はまた次の機会にしたいと思います(いつかネタバレ感想ブログもやるかもしれません……)。
とにかく、百合は好きだけどゲームはやったことがないという人には一度は触れてみてほしい作品です。DL版なども出ており、手に取りやすくなっていますので、ぜひプレイしてみてください!